中期経営計画
「あすか製薬ホールディングス 中期経営計画2025」
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経営方針
社会から信頼される会社であり続けるために、当社の中核となる国内医療用医薬品事業においてスペシャリティ領域でリーディングカンパニーへと飛躍するとともに、オープンイノベーションを活用して社会ニーズに応える医薬品を継続的に生み出すことで医療に貢献し続けたいと考えております。さらにこれまでの事業を軸に「予防、検査・診断、治療、予後」のヘルスケア市場全体に亘り、国内外において事業を展開するトータルヘルスケアカンパニーを目指してまいります。
目指す姿
「スペシャリティファーマを基盤とするトータルヘルスケアカンパニーを目指す」
4つのビジョン
- 1. 医療用医薬品を軸に事業スコープを拡大する
- 2. オープンイノベーション推進により業務革新を実現する
- 3. 中核となる国内医薬品事業のスペシャリティ領域で国内トップを確立する
- 4. 社会から信頼される会社であり続ける
目標数値
売上高(連結) |
営業利益率(連結) |
ROE(自己資本利益率) |
700億円 |
8% |
8% |
進捗チャート
7つの戦略
1. スペシャリティ領域の取り組み強化による企業価値向上
- 産婦人科領域のリーディングカンパニーとして女性のQOL向上に貢献する
- 甲状腺領域において啓発活動を推進し、潜在患者に対する治療に貢献する
2. 先端創薬による新薬の継続的創出
- オープンイノベーションを活用して新薬を継続的に創出する
- グローバルベースの導出入・アライアンス活動を活発化させる
3. 海外事業の展開
- アジアを中心に高品質な医薬品を展開しプレゼンスを向上する
4. トータルヘルスケア実現に向けた新たな価値提供
- 畜水産領域の繁殖・免疫と栄養の強みを伸ばし、コンパニオンアニマルの健康を支える
- 検査事業等で、新しいビジネスにチャレンジする
5. 業務効率化、コスト削減、財務基盤の強化
- 原価低減を推進する
- DXに取り組み業務効率化を推進する
6. コンプライアンスの徹底と信頼性を重視する組織風土の醸成
- コンプライアンスを徹底し社会からの信頼性を高める
- いついかなる時も高品質と安定供給を実現する
- HD体制の下でガバナンスを強化する
7. 成長戦略を実現するための人材育成
- 新規事業や環境変化に対応できる人材を育成・獲得する
- 女性、キャリアやシニアなど、多様な人材が活躍できる環境づくりを行う
(7つの戦略)中計3年目の成果と今後の取り組み
戦略 |
中計3年目の成果 |
今後の取り組み |
① |
- 産婦人科領域 年度売上No.1達成
- リフキシマ小児適応取得
- サスメド社と治療用アプリの共同研究開発及び販売に関する契約を締結
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- 産婦人科領域のリーディングカンパニーとしてのプレゼンス向上
- 本邦初のPOPとして、LF111の市場価値確立
- 治療用アプリなど、アラウンドピル領域での女性の健康への貢献
- 肝性脳症、甲状腺疾患の啓発活動の継続
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② |
- AKP-022( レルゴリクス配合剤)PhⅠ/Ⅱ開始
- LF111 申請準備
- Red Arrow Therapeuticsと妊娠高血圧症候群治療薬開発の共同研究契約締結
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- AKP-022 開発の早期進展(子宮筋腫・子宮内膜症)
- ライセンスイン/アウトの活発化によるパイプラインの拡充
- 創薬テーマ公募を活用した自社創製シーズの探索
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③ |
- Hataphar(ベトナム)への増資完了
- Hataphar新工場WHO-GMP承認申請
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- パートナーシップの強化
- Hataphar社新工場のPIC/S GMP対応に向けた支援
- 東南アジア周辺国の市場展開
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④ |
- CVCを設立し投資開始
- 女性の健康に関する研修動画販売開始
- 新規飼料添加物 発売
- ホルモン量測定キット2製品 発売
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- CVCなどから医薬周辺領域の新ビジネス探索
- フェムテック事業の早期確立
- コンパニオンアニマル領域の潜在的ニーズに対応する製品開発
- 非侵襲性測定ビジネスの確立
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⑤ |
- 原価低減施策の継続(2020年度 54.0% → 2023年度 51.2%)
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- サステナブルなサプライチェーンの構築
- グループ会社全体でのDX推進
- 安定的かつ効率的な財務体質の維持
- 不採算製品ポートフォリオの再検討
- 外部要因によるコスト増への継続対応
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⑥ |
- 品質マネジメントレビューの継続
- コンプライアンス研究の継続実施
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- グローバルなリスクマネジメントとコンプライアンス推進体制の構築
- クオリティカルチャーの維持
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⑦ |
- 各種施策による柔軟な働き方の拡充
- 健康経営優良法人ホワイト500認定(HDとして3年、製薬として6年連続)
- 教育研修制度の拡充
- ワークサポート応援金の創設と従業員に対するがん保険加入の実施
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- 次世代リーダー育成プログラムによる人材育成の強化
- 人材の価値を引き出す投資の継続
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財務資本戦略
資本コストや株主価値を意識した経営を徹底追求するとともに、果敢な成長投資を実行します。
2024年3月期の評価、「中期経営計画2025」の進捗
2024年3月期は、不安定な国際情勢やインフレ圧力、欧米各国の金融引き締めや急激な為替変動など、先行き不透明な状況が続きました。当社グループの中核となる医療用医薬品事業は、製造コストの上昇に加え、薬価の中間年改定をはじめとする医療費抑制策により薬剤費全体の伸びが抑制傾向にあるなど、引き続き厳しい事業環境にありましたが、そうしたなかで当社グループの業績は引き続き堅調に推移しました。産婦人科領域の新製品の伸長などにより、売上高は前年同期から23億8100万円増加し、628億4300万円となり、あすか製薬の時代から通算すると売上高は5期連続での増収となりました。また利益面につきましては、営業利益、経常利益ともに4期連続で増益となっており、ここ数年の業績は堅調に推移しています。
こうしたなかで当社グループでは、「中期経営計画2025」で掲げる目標「売上高700億円、営業利益率8%、ROE(自己資本当期純利益率)8%」の達成を目指していますが、国内においては、売上高全体の9割を占める医療用医薬品事業において毎年の薬価改定などの影響を新薬の投入などにより跳ね返していくとともに、フェムテック事業、アニマルヘルス事業、検査事業などグループ会社による医薬周辺事業への取り組みを強化していかなくてはならないと考えています。
一方、海外事業においては、成長が加速している東南アジアで早期展開を図っていく必要があります。そのために、まずは持分法適用関連会社であるベトナムの製薬企業Ha Tay Pharmaceutical Joint Stock Companyの財務面での取り込みを確実に進めていきます。
キャッシュアロケーションと事業ポートフォリオ
当社グループは、あすか製薬ホールディングス株式会社のもとで「医療用医薬品事業」、「アニマルヘルス事業」、「検査事業」を展開しています。これらに共通する課題であるトータルヘルスケアカンパニーの実現に向けた事業のグローバル化と多角化の推進が、われわれの基本的な成長戦略であり、成長投資の対象となります。
キャッシュアロケーションについては、成長投資の対象として、大きく4つの分野に注力していきます。
1つ目は、主力の医療用医薬品事業における将来の安定的なキャッシュインを獲得すべく、新薬パイプラインの拡充です。就中、国内リーディングカンパニーのポジションにある産婦人科、甲状腺領域のビジネス拡充を図ります。
2つ目は、新たな成長分野の確立に向けた投資です。われわれとしては、既存の事業とのシナジーを期待してフェムテック事業、アニマルヘルス事業、検査事業に注力します。このうちアニマルヘルス事業では、産業動物領域と比較すると当社にとって開拓の余地が大きいコンパニオンアニマル領域において新製品の投入を図ります。また、フェムテック事業では、女性の健康や働き方をサポートする資材の提供をスタートしましたが、今後は他社とのコラボレーションを推進していきます。
3つ目は、海外展開です。まずは東南アジアのビジネス展開を加速していきます。
最後に、これらの成長戦略に必要な人材や機能を獲得するために、人的資本投資や他社との業務提携・資本提携などにも積極的に投資していく方針です。
われわれは時代にあわせて積極的に事業戦略を転換させてきました。過去を振り返ると、2011年の東日本大震災で当社グループの主力生産拠点である、あすか製薬いわき工場(福島県)が被災して、医薬品の生産・供給体制に支障をきたした時期がありました。これを受けて、売上高も利益水準も暫くの間低迷しました。当時は、薬剤費の削減を図っていこうとする政府の方針にあわせて、ジェネリック医薬品に注力していた時期でもありました。震災の影響を払拭した後、われわれは事業戦略を転換し、元来から得意としていたスペシャリティ領域である内科、産婦人科、泌尿器科に経営資源を集中する方向に舵を切り、国内外からのライセンスインや創薬も含めた研究開発を積極的に推し進めました。あの時期のスペシャリティ強化の成長戦略が奏功し、近年の堅調な業績が実現できたのだと考えています。このように事業ポートフォリオの転換は、持続的な企業成長に欠かすことのできない取り組みです。引き続き当社グループは、スペシャリティ領域での強みを活かしつつ、同時に次の成長の柱となる新たな事業ポートフォリオの構築を目指していきます。現在、当社グループの事業は医療用医薬品がメインですが、治療用アプリや医療用機器に加えて、女性の健康課題解決を支援する取り組みを強化するなどの医薬周辺領域の開拓も進めています。
国内の医療用医薬品事業は、比較的景気変動の影響を受けにくいディフェンシブなセクターといわれています。とはいえ実際には、薬価改定の影響や円安などによる調達・製造コストの増嵩など、経営を大きく左右するマイナスの要因もあります。複数の事業が安定的に経営を支え合うような事業ポートフォリオの構築を目指し、引き続き企業体質の強化を推進していきます。
FY2023-2025計画(2023年11月開示)

*5 想定営業利益+減価償却費+研究開発費(除く固定費)
*6 CVC:コーポレートベンチャーキャピタル
*7 CA:コンパニオンアニマル
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて
当社グループは、すでにご説明したとおりここ数年堅調な業績で推移しています。一方、企業価値を測る指標である時価総額に大きな変化はみられず、PBR(株価純資産倍率)の改善が大きな課題でした。そこで、私たちは社内での分析に加え、株主や投資家の皆さまのご意見をも伺うことで、当社グループが抱える問題点を洗い出し、現状の評価と改善に向けた方針や取り組みをまとめて、2023年11月に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」として発表しました。その要点についてご説明いたします。
当社グループのROEが2022年3月期に「中期経営計画2025」の目標値である8%を前倒しで達成し、その後も8%を上回っている状況にありながら、PBRは2019年3月期以降、2023年3月期まで、1倍割れの状況が続いていました。その背景には、「成長戦略の実現性が十分に理解されていないこと」、「IRも含め対外的な情報発信が十分でなかったこと」、また「具体的なキャッシュアロケーションの開示がなく、成長戦略および株主還元に対する明確な方向性を示していなかったこと」などがありました。加えて、当社の本業で稼ぐ力について、市場の評価を十分に高められていないという課題も認識しました。
そこでわれわれは今回の発表のなかで、成長戦略についての基本方針を示し、具体的なキャッシュアロケーションも開示しました。
主力の医療用医薬品事業では、産婦人科領域におけるリーディングカンパニーとしての立ち位置のさらなる強化を基本方針として打ち出しました。研究開発型企業として創薬研究を強化するとともに、トータルヘルスケアカンパニーとして成長するために、事業活動で獲得したキャッシュを医療用医薬品事業だけでなく、グローバル展開やフェムテックなどの新規事業に投資していくとともに、経営基盤を強化するための人的資本への投資や生産設備への投資にも、配分していくことにしました。
また、株主還元については、新たな方針をスタートさせました。当社グループは従来、業績に関係なく安定的な配当を行うことを株主還元の基本方針としてきました。しかしながら業績が改善するなかで、配当金額や配当性向の見直しなどに対して、投資家の皆さまからご指摘を頂戴し、それを受けて2025年3月期以降の配当は業績連動利益配分方式に移行し、連結配当性向30%を目安に株主還元を実施する方針としました。あわせて1株当たり配当金の下限を年間30円と定めることで、業績に連動した利益還元を行いつつ安定的な配当の維持を図ることにしました。
PBRはROEとPER(株価収益率)に分解できますが、ROEが堅調な業績に応じて上昇傾向にあるなか、PERは低い水準のまま推移していました。この背景には私たちの成長戦略と株主や投資家の皆さまが想定する当社グループの将来性にはミスマッチがあると考え、当社グループが本業で稼ぐ力について皆さまの理解を深めていただくために、IR活動の強化を打ち出しました。PERは、市場や株主からの企業の成長期待を示すといわれています。
今後とも当社グループの成長性に対する理解を深めていただくよう、われわれの戦略をタイムリーかつ丁寧に説明する機会を創出していきます。そのためにIRミーティングの内容充実、個人投資家・機関投資家向け決算説明会の開催、皆さまの関心の高いパイプライン説明会やスモールミーティングの開催などを積極的に推進します。皆さまとの対話から得られた意見は、適宜取締役会に報告してレビューを実施し、適時適切な情報発信ができるよう改善につなげていきます。
PBR(株価純資産倍率)、ROE (自己資本当期純利益率)の推移
資本効率の高い経営を目指して
当社グループは、資本構成の最適化に取り組み、企業価値の最大化を目指しています。運転資本のコントロールや固定資産管理の強化に加え、非事業資産についても継続的に事業での有効活用および売却による見直しを実施しています。一例として政策保有株式については、資本効率の観点から保有の継続適否を検証し、「シナジーが少ない」、「保有する意義が必ずしも十分ではない」と判断される株式については縮減を図ることとしています。2024年3月末までに 20%未満にすることを目標に掲げ、継続的な縮減を続けた結果、2024年3月末時点における政策保有株式の連結純資産に対する割合は、18.4%となり、前期末に比べて3.9%低下しました。
また、当社グループは、株主の皆さまと同じ目線をもって、株価を意識した経営を突き詰めていきたいと考えています。2024年度から、株主の皆さまとの一層の価値共有を進めるために、譲渡制限付株式報酬の対象を、従来の取締役以上からすべての執行役員へと拡大しています。
当社グループは、「中期経営計画2025」においてROE8%を目標に掲げています。これまで継続的な改善に取り組んできた結果、2024年3月期にROEは13.0%となり、中期経営計画の目標を超える水準をキープしています。当然のことですが、事業会社3社の経営は、各々のROEを強く意識しながら進められています。グループ全体の事業戦略会議の場では、各社の事業の進捗や業績の報告とともに、ROEの数値が示され、「あすか製薬ホールディングスのROEをさらに改善していくために、各社がいかなる取り組みを行うべきか」という議論を行っています。当社グループのROEを重視する姿勢は、役員の報酬設計にも表れています。当社グループの役員報酬は、持続的な企業価値向上に資する仕組みとするために、さまざまな業績指標と連動していますが、そのなかには売上高、営業利益に加えてROEも含まれています。また、2023年度からはサステナビリティ経営の推進を目的に、業績指標に加えてCO2排出量の削減など非財務指標を役員報酬とリンクする仕組みも導入しました。
株主資本コストについての考え方
当社グループは、資本コストを意識した経営に努めています。「ROEから株主資本コストを差し引いたエクイティスプレッドとPBRは、基本的に正の相関である」という考え方のもと、ROEの改善だけでなく資本コストの引き下げにも取り組んでいます。
株主資本コストについては様々な見方があると認識しておりますが、企業が資本調達の際に負担する資本コストは、広い意味では投資家が企業に期待する収益率・リターンであると考えられます。その際に重要となるのが、IR活動だと認識しています。企業がIR活動に消極的で、財務や事業に関するディスクロージャーが不十分だと、どのようなリスクや機会があるのか十分には特定できず、その企業への投資はハイリスクと捉えられ、期待収益率を高めに設定せざるを得なくなります。その反対に、「十分なディスクロージャーを行い、投資家にサプライズを与えない」という方針の企業であれば、その企業への投資はローリスクと捉えられ、期待収益率が下がり、結果として株主資本コストの改善が図れるものと考えます。こうした考え方のもとで、IR活動の一層の強化により実質的な株主資本コストの引き下げを図り、株主、投資家の皆さまとともに企業価値向上を目指していきます。
PBR 1倍超の早期実現を目指すための取り組み
1. 成長戦略
2. 株主還元の強化
- 2025年3月期以降、連結配当性向30%を目安
- 一株当たり配当金の下限は年間30円