| Assess(評価する) |
| リスク |
物理的リスク |
水ストレスの増大による操業中断リスク、生態系の劣化による原材料供給の不安定化リスク |
| 移行リスク |
自然関連の規制強化(例:水質基準の厳格化、生態系保護区の拡大)によるコスト増大、消費者の環境意識向上による製品選好の変化 |
| レピュテーションリスク |
生物多様性への負の影響による企業イメージ低下 |
| 機会 |
新製品・サービス開発 |
生態系に配慮した医薬品開発や、環境負荷の低い生産プロセスの導入 |
| 効率改善 |
水使用量の削減、廃棄物リサイクルによるコスト削減 |
| ブランド価値向上 |
自然環境保全への貢献を通じた企業価値向上 |
事業戦略への影響
特定された自然関連のリスクと機会は、当社の事業モデルと財務計画に以下の影響を与える可能性があります。
| 研究開発 |
生態系への影響が少ない新規医薬品候補物質の探索や、持続可能な製造プロセス技術の研究開発に優先的に投資を行います。 |
| 生産 |
水ストレス地域における工場では、水循環システムの導入や節水設備の強化を戦略的に進め、操業の安定性を確保します。 |
| 調達 |
生物多様性保全に配慮したサプライヤーとの取引を優先し、持続可能な原材料調達の基準を強化します。これにより、サプライチェーンのレジリエンスを高め、将来的な供給途絶リスクを低減します。 |
| 財務計画 |
自然関連のリスク対応策(例:環境技術投資、サプライチェーン監査)に必要な資金を予算に組み込み、機会(例:環境配慮型製品による売上増)を財務目標に反映させることを検討しています。 |
事業レジリエンス
自然関連のリスクと機会が、当社の短期、中期、長期のレジリエンスに与える影響は以下の通りです。
| 短期(~3年) |
水不足や局所的な環境規制強化による一時的な操業中断リスクを、節水対策や排水処理の強化で最小限に抑えます。 |
| 中期(~10年) |
サプライチェーンにおける自然資本の劣化リスクに対し、持続可能な調達方針の導入と代替供給源の確保で対応し、安定的な原材料供給を維持します。 |
| 長期(10年超) |
広範な生態系サービスの喪失による社会全体の変化に対応するため、研究開発を通じて環境に優しい新技術・製品を創出し、社会変革をリードすることで、長期的な事業成長の基盤を築きます。 |
当社グループのTNFD(LEAPアプローチ)における優先地域(Priority Locations)は「いわき工場(福島県)」を中心とした主要製造拠点が最優先の特定地域となります。
自社の直接操業地域の中で「自然との接点」が最も大きい最優先すべき特定地域(Direct Operations)
あすか製薬 いわき工場(福島県いわき市)
当社の主力工場であり、生産量・エネルギー使用量・排水量が最も多いため選定しました。
- 自然との接点(依存と影響)
水資源:医薬品製造(洗浄・冷却・原料溶解)に大量の良質な水を必要とします。
排 水:製造プロセスからの排水が、地域の水系(夏井川水系や近隣河川など)および海洋へ与える影響。
- 評価のポイント
「WRI Aqueduct(世界資源研究所の水リスク地図)」を用いた、福島県いわき市エリアの「水ストレス(需給逼迫度)」と「洪水リスク」の評価結果は以下の通りです。
WRI Aqueduct 評価結果

当社グループでは、LEAPアプローチに基づき、事業活動と自然との接点を評価しています。まずは、生産活動の中核であり水資源への依存度が高い主要製造拠点である『いわき工場』および』を優先地域として特定し、水リスクおよび周辺生態系へのインパクト評価(Evaluate)をしました。
(今後は、原材料調達先を含むサプライチェーン上流についても、生物多様性重要地域との重複確認を進めてまいります。)
TNFD推奨ツール「ENCORE」を用いて医薬品製造業の自然資本への依存度を分析した結果、直接操業での「浄水」への依存度が「Very High(非常に高い)」と判定されました。これにより、当社グループにとって浄水管理が重要課題であると再確認しました。
上記分析を受け、主力生産拠点であるいわき工場の所在地について、「WRI Aqueduct」を用いて水ストレスおよび洪水リスクを以下のように評価しました。
- 水ストレス
「Low-Medium」であり、現時点での取水リスクは管理可能な範囲です。
- 洪水リスク
気候変動シナリオに基づくと将来的なリスクが高まる予測であるため、BCP(事業継続計画)における浸水対策を強化しています。
更にこれらの分析結果を統合した結果、 製薬業として水への依存度が高い一方で、当社の主要拠点は水資源が豊富な地域に位置しています(Aqueduct結果)。しかし、排水による水質汚濁(ENCOREで指摘されるインパクト)については、法規制値を大幅に下回る自主基準で管理を徹底し、地域の生物多様性保全に貢献します。
ここまで、「水」に関わる筋書きを中心に、次年度以降の課題として「ENCORE」で指摘されたその他の項目(廃棄物など)についても順次評価を進めてまいります。
※1 TNFDフォーラム:
自然に関する企業のリスク管理と開示の枠組みを構築するために2021年6月に設立された国際組織、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)での議論を、専門知識を提供するステークホルダーとしてサポートする国際組織
※2 LEAPアプローチ:
自然関連課題を評価・管理するために、TNFDが開発した評価手法。
Scoping/Locate/Evaluate/Assess/Prepareの4つのステップからなり、このアプローチを用いた分析を行うことにより、TNFD開示提言で開示すべき内容の多くをカバー可能
※3 TCFD:
G20の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び、金融機関の対応をどのように行うかを検討するため、マイケル・ブルームバーグ氏を委員長として設立された「気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」
※4 ENCORE:
自然関連リスクへのエクスポージャー(曝露)を調査し、自然への依存とインパクトを理解するために役立つオンラインツール